法要とは、遺族が故人を偲び冥福を祈るために行う「追善供養」のことを指します。新型コロナウイルス感染症が世界的にの感染拡大している背景から、私達の生活スタイルはあらゆる分野で影響を受け変化してきています。生活スタイルのみならず法事・法要に関しても例外ではありません。
今回の記事では、コロナ禍中での法事・法要はどういったように行えば良いのかなど、法事・法要を行う場合の具体的な対策や会食・案内状について詳しくご紹介致します。
コロナ禍中での法事・法要
コロナ禍中での法事・法要に関わらず、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐ為の対策として「密閉・密集・密接」の3密を避けることを厚生労働省等の機関から呼びかけられているのは皆さんご存知の通りです。通常の法事・法要では遺族を筆頭に親族の方や知人の方々等が集い、僧侶による読経・参列者による焼香などが行われます。また、法要・法事の後には故人への供養と参会者に対する参列のお礼・お清めの意味を兼ね会食を行う場合もあります。こうした一連の行事は、3密の場となりやすい傾向にありますのでコロナウイルス感染への危険性を気にされる方もいらっしゃるかと思います。実際にお寺の中にはコロナウイルス感染防止対策として法事・法要の受付の中止あるいは延期をしているところもあります。勿論、感染対策を十分に行ったうえで法事・法要を受付ているお寺や斎場もあります。こうした理由だけではなく、親戚の方や知人の方々が遠方にいる場合などは、県や国を超えての移動も伴う為、通常通りのように一同に集い法事を行うことが難しい場合もあります。感染対策を十分に行いながら法事・法要を行うか、今は感染拡大の終息を願い中止あるいは延期をするかは事情に応じた判断となるかと思います。それでは、法事・法要を行う場合の具体的な対策はどういったものなのかをお伝え致します。
- 法要の前や後に手洗い・消毒を徹底して行う
- 参列者・僧侶共にマスクの着用を徹底する
- 密閉空間を避ける為、十分な換気を行う
- 密集を避ける為、着席する際には間隔を空ける
- 焼香の際にも間隔を空ける
- 間近での会話を避ける
- 発熱症状がある場合や体調の優れない方は参列をしない
具体的な対策は上記のような事柄となります。
実際に3密のリスクが高い傾向にある食事の席である法事の会食は中止すべきかという問題ですが、感染拡大を防止する為に法事の会食のみ控えるという方法を取る場合もあります。しかし、法要のあとの食事は、参列のお礼・お清めの意味を兼ねていますし、故人を偲ぶという意味もある大事な場面でもありますので会食は法事に必要な行事の一つと考える方もいらしゃいます。近年では飲食店側でもコロナウイルス対策を徹底し座席の間隔を広く取る・アクリル板を設置する・除菌や換気を行うなどして対策を行っていますから、そういった感染対策をしっかりと行っている飲食店で会食を行うという方法もひとつですね。会食を中止する場合には、案内状でコロナウイルス対策として会食を行わないことを事前に知らせるようにする必要があります。忙しい時間を割いてわざわざ来ていただくわけですから持ち帰りが可能なお弁当などを用意するとより丁寧ですね。
案内状について
正式な案内状の場合は、出欠確認ができるように返信用のはがきを同封しますが、略式の往復はがきを使うことも可能です。出欠確認を電話で行う場合もあるようですが、形式に則るのであればはがきでの返信が好ましいです。通常の法事・法要の案内状に記載する内容は大きく分けて三つとなります。まず一番初めに案内状には、誰の法事であるのか・何回忌なのかを明記します。この際に回忌の数に注意しましょう。一番初めの法事は初七日ですが、初七日から百か日までは亡くなった日を含めた日数で表します。しかし、三回忌以降は亡くなってからの年数から一年を引いた年に行います。例えば、三回忌は亡くなってから満二年目に行われますので、二年目であっても二回忌とは書かないようにしましょう。※法事・法要の種類については当HP内「法事・法要について」で詳しくお伝えしていますので併せて参考にして下さい。次に、法事や法要を行う日時・場所を明記します。会場の電話番号も記載するとより丁寧です。最後に法要後の会食の有無を明記し、会食を用意する場合にはその案内も記載します。
ここまでは通常の法事・法要の案内状に記載する内容をお伝えしましたが、コロナウイルス感染拡大の影響により、法事を中止または延期にする場合には案内状にはどのように書けばいいのかをお伝えしていきます。コロナウイルス感染の影響で延期または中止するということを直接書いても良いですし、直接的に書かずとも昨今の状況から理解して頂くという方法もありますね。また、今回は中止する場合であっても終息してから日を改めて執り行う可能性もありますから、そうしたことを考慮するのであれば「中止」とは書かず、「延期」としておくと良いでしょう。
それでは実際の文例についてもお伝えしていきます。
- コロナウイルス感染拡大の影響ということを直接知らせる場合
- 謹啓
◯◯の候 皆様にはご健勝のことと存じあげます
この度予定しておりました 故(故人のフルネーム)の一周忌法要は
新型コロナウイルスの感染拡大を鑑み
延期させていただくこととなりました
日程が決まった際は 改めてご案内申し上げますので
ご理解のほど よろしくお願い申し上げます
謹白
令和〇年 〇月 〇日 (施主のフルネーム)
- 直接的に書かずとも昨今の状況から理解して頂くという方法
- 拝啓
◯◯の候 皆様にはご健勝のことと存じあげます
この度予定しておりました 故(故人のフルネーム)の一周忌法要は
昨今の状況を鑑み 延期させていただくこととなりました
日程が決まった際は 改めてご案内申し上げますので
ご理解のほど よろしくお願い申し上げます
敬具
令和〇年 〇月 〇日 (施主のフルネーム)
本来であれば案内状は「参列してほしいという場合に案内する」ものです。なので、既に案内状を出した後に延期や中止となった場合などは別ですが、延期または中止する旨をあえて告知する必要はないとも言えます。状況や場合によって、延期または中止するという選択肢ではなく、コロナウイルス対策を行いながら家族など身近なごく少人数で法事を行う選択肢を選ぶ場合もあるでしょう。その場合には、参列を断る為に案内状を出すのはかえって失礼になる恐れがあると思います。法事を小人数で行う場合には、参列者だけに電話やメール等で案内の連絡を行い、案内できなかった方々には法事を済ませた後に改めて、法事が無事に済んだ旨をお伝えするようにすると良いでしょう。
- 法事が無事に済んだ旨をお伝えする案内状の文例としては、
- 拝啓
時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます
亡き(続柄) (故人のフルネーム)儀の〇〇法要は 〇月〇日
昨今の状況を鑑みて 近親者にて滞りなく相済ませました
ご連絡が遅れましたことを深くお詫び申し上げますとともに
ここに謹んでお知らせ申し上げます
敬具
令和〇年 〇月 〇日 (施主のフルネーム)
といったようにすると良いでしょう。案内状に共通して注意しなければならない点として、「、」「。」といったように句読点は使わないようにしましょう。理由としては、書状が毛筆で書かれていた名残りによるもの・法要や葬儀が滞りなく進みつつがなく終わるよう途中で区切るための句読点を打たないという説・相手への敬意を表す為などといわれています。また、時候の挨拶は月によって相応しいものを使いましょう。時候の挨拶の例としては、一月 厳寒の候・二月 余寒の候・三月 浅春の候・四月 暮春の候・五月 新緑の候・六月 梅雨の候・七月 盛夏の候・八月 残暑の候・九月 初秋の候・十月 秋涼の候・十一月 暮秋の候・十二月 初冬の候、などといったようになります。
法事の参列を断る場合
ここまでは主に施主側の立場のコロナ禍中での法事・法要についてお伝えしていきましたが、最後に参列者側としての立場から疑問に思われることの多い点をお伝えしていきます。現状のようなコロナ禍中の状況では、私生活においてもあらゆる面での自粛を行っている方も多いと思われますが、法事に関してもやむを得ず参列を断念しなければならない場合も多々あります。感染拡大時や緊急事態宣言が発令された場合には外出制限・移動制限があり参列することが不可能な場合もありますね。このような特別な場合だけでなく、自身の判断で今は外出・移動を控えたいと思われる方も多いはずです。コロナ禍中ということは、誰もが承知している事ですから、もしも法事に参列できなかったとしても後ろめたい気持ちになる必要はありません。
ただし、法事の案内状が届いている場合には、参列できないことが決まった段階で可能な限り早く喪主の側に参列を辞退するという旨をしっかりと伝えるようにしましょう。その場合の連絡手段は電話やメールでも問題はありません。葬儀のように不測の事態ではなく、あらかじめ日程の決まっている法事な場合には時間的に余裕がありますが、遺族側は食事などの手配もありますから、実際の参列者の人数を事前に把握しておきたいものです。やむを得ず参列できないという場合でも直前ではなく可能な限り早めに伝えることがマナーとなってきます。なお先にもお伝えしましたが、コロナ禍中という事は、誰もが承知していますから後ろめたい気持ちになることはありません。郵送などで香典(御仏前)をお出しすることにより、自分自身の心の整理もつきますし、故人や遺族の方への気持ちは十分に伝わることでしょう。