合掌礼拝とは、仏式の葬儀における作法の一つで葬儀に出席する際には身に付けておきたい最低限の動作と言えます。宗派ごとによっても合掌礼拝の違いがありますので、そちらも併せて説明いたします。
今回の記事では、合掌と礼拝についてご紹介致します。
合掌とは
合掌は仏式葬儀での基本的な動作であり、仏様信仰における基本的な作法の一つです。この所作は、仏教が生まれたインドで生まれ日本には仏教伝来と共に伝わってきました。合掌はサンスクリット語の「アンジャリ(anjali)」の訳で、インドの敬意を表す所作の一種が仏教に取り入れられたものです。インドでは右手が清浄を左手が不浄を表します。同様に仏様の世界の象徴で悟りの世界を表す右手と、現世つまりは自分自身を意味する左手を合わせることで、仏様の世界と現世が一体となり仏様への帰依や成仏を願う気持ちを示します。葬儀においては、仏様に対し「故人のことをよろしく頼みます」という願いを込めて合掌が行われます。厳密にいえば「十二合掌」と呼ばれるいくつかの形の過程がありますが、基本的な合掌方法としては次のとおりです。
- 合掌の所作
- 指と指の間を離さず、手のひらをぴったりと合わせる。
- 手のひらの角度は45度程度。合わせた両手を胸の前に出し
- 脇に力を入れて肩肘を張らずに背筋を伸ばす。
- 手を合わせたら目を閉じ、会釈するように頭を下に傾けます。
礼拝とは
礼拝とは、主に神仏を拝む行為のことを指します。仏教においては「礼拝(れいはい)」ではなく「礼拝(らいはい)」と読まれています。礼拝は、合掌の姿勢で上体を45度程度前方に傾け、礼をしてからゆっくりと上体を起こして合掌を解きます。寺院の山門をくぐったときやお堂に入るとき、お焼香をするときなどには合掌をせずに上体だけを15度程度に傾けて礼をする揖拝(ゆうはい)も用いられますので、それぞれの状況に応じて使い分ける必要があります。なお、礼拝には「お礼をする」という意味があり、祈ることとは異なります。
宗派ごとの合掌と礼拝
一般的に仏式葬儀では合掌礼拝が必ず行われます。合掌と礼拝の方法に差はほとんどありませんが、数珠に関しては掛け方や使用する種類など、宗派によって注意しなければならない点がいくつかあります。また、日常礼拝にも違いがあります。数珠に関する知識については以下の記事にて詳しくご紹介していますので併せてご覧ください。
こちらからは宗派ごとの日常礼拝についてご紹介いたします。
- 浄土宗
- お仏壇を清掃した上でお供え物をします。
- 線香を1本または3本立て、リンを鳴らします。
- 合掌礼拝を行い、南無阿弥陀仏を唱えます。
- いただきものがあった場合は、まずはお供えします。
- 真宗大谷派
- 両手を胸の前で自然に合わせ、念珠をかけます。
- 指先はまっすぐに伸ばし、
- 指と指の間にすきまをつくらないようにあわせます。
- 横から見ると、指の線が体の線に対して約45度上方に伸びている形。
- 合掌をといてから軽く頭を下げて礼(頭礼)をします。
- 本願寺派
- 両手を胸の前に合わせ指をそろえ約45度上方にのばし、
- 念珠をかけて親指で軽くおさえます。
- そのまま肩ひじをはらず自然に背筋を伸ばし、
- ご本尊を仰ぎ「南無阿弥陀仏」とお念仏をとなえます。
- 合掌したまま上体を約45度かたむけお礼をし、
- 上体をおこしてから合掌をときます。
- 天台宗
- お仏壇を清掃した上で五供に沿ってお供え物をします。
- 線香は基本的に3本立て、リンを鳴らします。
- 合掌礼拝を行い、南無宗祖根本伝教大師福聚金剛の宝号を唱えます。
- いただきものがあった場合は、まずお供えします。
- 真言宗
- 仏前に座る前に手を洗って口をすすぎ、身を清めます。
- お仏壇を清掃した上でお灯明をともして
- 線香を立て、リンを鳴らします。
- 合掌、3度礼拝を行います。
- 礼拝が終わったら念珠を左腕にかけ
- 経本を両手でいただき、読経へ移ります。
- 唱え終わったら念珠を両手にかけ直し、合掌して礼拝します。
- 再度3回丁寧に礼拝し、お灯明を消して終了します。
- 日蓮宗
- お仏壇を清掃した上でお灯明をともし、
- 1本か3本線香をつけたらお仏飯とお茶湯を供えます。
- 左手に数珠をかけてリンを3つ鳴らし、
- 姿勢を正して合掌礼拝を行います。
- 南無阿弥陀仏を唱えます。
- いただきものがあった場合は、まずお供えします。
- 臨済宗
- お仏壇を清掃した上で、
- お仏餉(ご飯)とお茶湯、あればお菓子や果物を高杯に供えます。
- お灯明をともして線香は1本か3本立てます。
- 姿勢を正したら左手に数珠を持ち、リンを2回鳴らします。
- 合掌礼拝して南無釈迦牟尼仏を唱えます。
- いただきものがあった場合は、まずお供えします。
- 曹洞宗
- お仏壇を清掃した上で、
- お仏餉(ご飯)とお茶湯、あればお菓子や果物を高杯に供えます。
- お灯明をともして線香は1本か3本立てます。
- 姿勢を正したら左手に数珠を持ち、リンを2回鳴らします。
- 合掌礼拝して南無釈迦牟尼仏を唱えます。
- いただきものがあった場合は、まずお供えします。
宗派ごとの数珠のかけ方については以下にまとめましたので参考にしてください。
ここまでご紹介した内容については宗派ごとの一般的な作法ですので、ご自身の流派やお師匠様によって教え方が異なる場合もあります。ご自身の流派やお師匠様の作法に沿うようにして下さいね。