法事で僧侶を自宅に迎える際にはお茶と茶菓子を出しておもてなしするのがマナーです。茶菓子の種類や選び方、お茶出しのマナーについてご紹介するのは勿論、法事の場面で僧侶に喜ばれる心遣いも併せてお伝え致します。
今回の記事では、法事での僧侶へのお茶出しについて詳しくご紹介致します。
茶菓子の選び方など
自宅で法事を営む場合は読経や焼香を寺院に依頼します。冒頭でもお伝えした通り法事の当日に来られる僧侶にはお茶とお茶菓子を出しておもてなしをするのがマナーです。法事で僧侶に出すお茶は、読経の前後で喉を潤してもらうための配慮ともいえるので大切なマナーです。お茶の出し方や必要な道具などお茶出しの作法は多岐にわたります。僧侶に対するお茶出しならではの注意点もありますので、この機会に覚えておくと良いでしょう。
法事で僧侶に出す茶菓子は、好みに合わなかったり空腹ではなかったりと何らかの理由で僧侶が口にしないことも想定されます。ですから、僧侶へのお茶出しでお持ち帰りに適した個包装の茶菓子がおすすめです。その中でも型崩れしにくくベタつかない腐らない茶菓子を選びます。その場で食べなければならない、菓子皿に盛ったゼリーやようかんは避けましょう。和菓子では饅頭やもなか、洋菓子ではマドレーヌやクッキーなど手早く口にできる茶菓子が無難でしょう。茶菓子は一種類から二種類程度で、可能であれば複数個を用意しましょう。二回以上お茶出しをする場合には茶菓子の種類を変えて出すようにしましょう。お茶出し用の茶菓子は複数種類を用意しておきましょう。個包装の茶菓子であればそのまま菓子皿にのせて問題ありません。菓子ようじも個包装の茶菓子では不要です。個包装されていない茶菓子であれば、菓子皿に懐紙を敷きその上に茶菓子をのせましょう。この際の注意点として、法事で使用する懐紙は弔事用の折り方で用意する必要がありますので間違えないようにしましょう。弔事用の折り方については、ふたつに折ったときに上側の紙が左下がりになるようにします。詳しい折り方についてはネット上で動画付でも解説されていますので、そちらを併せて参考にしてください。懐紙は様々な用途に使用され、茶菓子に関しては皿の代わりとして使われることもありますが、法事で用意する懐紙は茶菓子を持ち帰る際に使用して頂くことを想定したものです。
道具や出し方について
出す茶菓子によって違いはあるもののお茶出しには必要な道具がいくつかあります。お茶や茶菓子の運び方や出し方を知り、適切な作法でのお茶出しを目指しましょう。出し方なども併せてお茶出しのマナーをお伝え致しますので参考にしてください。
まず始めに茶菓子を出すに当たって用意しておきたい道具についてお伝え致します。法事では僧侶と参列者に同じタイミングでお茶出しをすることがあります。僧侶に出すふた付き茶わん・茶たくといった道具は参列者よりも格が高いデザインを選びましょう。お茶出しをする順番も、参列者よりも僧侶を優先します。また下記とは別途に必要に応じて手や口元をふけるようにおしぼりとおしぼり置きを用意するとより丁寧です。
- 使用する主な道具
- 丸盆
つなぎ目を手前・つなぎ目と逆側を正面にして持つ - ふた付き茶わん
お茶出しに適した形式の茶わん - 茶たく
茶わんとセット又は茶わんに合うデザインのものを使用 - 菓子皿(銘々皿)
のせる菓子の種類や季節に合わせ、菓子皿の素材やデザインを選ぶ - 懐紙
個包装ではない茶菓子をのせる際に使用し、茶菓子をのせる場合はにじみ止めのある白無地の懐紙を選ぶ - 菓子ようじ
個包装ではない茶菓子をのせる際に用意し、茶菓子の前に横にした状態で置く
続いて茶わんと茶たくの運び方についてお伝え致します。お茶出しではお茶を茶わんに注いでから丸盆にのせて運びます。お茶がこぼれないように注ぐ量は七割程度でとどめておきましょう。また、茶わんと茶たくは別々にしてお盆にのせます。茶たく同士は丸盆の上で重ねて運んでも問題ありません。お盆で茶わんと茶たくを運んだら丸盆をいったん置き、置いた丸盆の上で茶わんを茶たくにのせてから両手でお茶を差し出しましょう。木目がある茶たくでは、相手から見て木目が横向きになるように置きます。絵柄が付いている茶わんは絵柄がある面を相手に向けた状態で出すのがマナーです。
お茶と茶菓子の置き方と出す順番については、相手から見た際に右側にお茶・左側に茶菓子となるように置きます。お茶と茶菓子は同じ丸盆にのせて運んでも問題ありませんが出す順番には注意しましょう。相手の左側からお茶出しをするならお茶→茶菓子の順、右側から出すなら茶菓子→お茶の順で出しましょう。相手の右後方から出すのが最善と言えますが、相手が畳の上に座っている場合や席の配置によっては正面から出しても問題ありません。
タイミングについて
法事で僧侶に茶菓子を出すタイミングは、主に「僧侶が到着したとき・読経が終わったとき」の二回です。読経の時間が長い宗派では追加で「読経の休憩」にお茶出しをすると喜ばれます。お茶出しのタイミングによって、配慮しておきたい点は様々です。まずは僧侶が到着したときですが、僧侶が到着したら着替えなど法事の準備を進められる控室に案内しましょう。僧侶用の控え室として法事の参列者が待機する場所とは別の部屋を用意します。僧侶を控室に通したら可能な限り早いタイミングで茶菓子とお茶をお出しましょう。読経が終わったときについては、到着時刻と法要の開始時刻との兼ね合いにより到着時の茶菓子は省略してもマナーの許容範囲内とされています。しかし、読経の後のお茶出しでは茶菓子を忘れずに出すのがマナーです。読経や法話が終わったタイミングでは、参列者にもお茶と茶菓子を出します。参列者に出す茶菓子は僧侶と同じ種類で問題ありません。読経や法話終了後に僧侶と対話する時間があれば、僧侶と一緒に参列者もお茶や茶菓子に手をつけます。僧侶の話に集中し会話がしやすいよう素早く口にできる一口サイズの茶菓子が好まれます。最後に読経の休憩のタイミングについてですが、宗派によって読経時間には長短があります。一時間以上といったように読経時間が長い宗派では読経の途中で休憩を挟む場合もあるかもしれません。休憩時間が設けられるほど長い読経をする宗派では休憩のタイミングでお茶を出すと喜ばれることが多く、休憩時間がなくても読経中に適宜喉を潤せるよう、読経する僧侶の手元付近にお茶を用意しておくのも配慮のひとつでしょう。
お茶出しをするタイミングは基本的には僧侶の到着時と読経後で問題ありません。ただし、茶菓子の好みや喉の渇きの感じ方は季節のみならず僧侶によっても異なるものです。僧侶の様子に目を配りながら、僧侶に尋ねてみるのも良いでしょう。お茶に関して尋ねる際にはホットとアイスのどちらが良いのかを聞いた上で出すとより丁寧なお茶出しとして喜ばれるでしょう。マナーを守ることはもちろん大切なことですが、形式ばかりにとらわれずに僧侶を思いやる気持ちを大切にし、僧侶に少しでも快適に過ごしてもらえるように出来ると良いですね。