日常生活では、家族内でも異なる宗教・宗派を信仰していたとしても大抵の場合は問題なく過ごすことが出来ると思います。しかしながら家族で宗教が違う場合、葬儀ではいくつかの選択肢が出てきます。可能な限り故人の遺志を尊重したいところですが、事情は各家庭で異なるため一概に正解と言えるものはありません。
今回の記事では、家族で宗教・宗派が異なる場合の葬儀について詳しくご紹介致します。
家族で宗教・宗派が異なる場合の葬儀
各家庭によって宗教や葬儀に対する事情はさまざまです。冒頭でもお伝えした通り、家族の宗教や宗派が違うときの葬儀は一概に正解と言えるものはありません。しかし、宗教や宗派が家族で異なる場合の葬儀方式にはいくつか例があります。その中からいくつかの葬儀方法の例をご紹介します。
- 葬儀方式
- ●故人様の宗教を尊重する:故人様のご遺志に沿った宗教・宗派でご葬儀を行い供養も故人様のご遺志に沿う方法です。この方法では家族や親族の意見は取り入れにくくはなりますが、故人様のご遺志が最も尊重されます。
- ●告別式を区切って行う:告別式を前半後半の二部制にする方法です。例えば、前半は無宗教で誰でも会葬できるようにし、後半は故人様が信仰されていた宗教・宗派で執り行うといったような形が挙げられます。告別式は多少複雑なものとなりますが、家族の意見も故人様のご遺志も取り入れられるといった利点があります。
- ●葬儀は無宗教で行い、追善供養などは故人様のご遺志に沿う:この方法では故人様と異なる宗教・宗派の家族も葬儀を執り行いやすく故人様の希望も叶います。
- ●お通夜式と告別式を異なる形式にする:お通夜式は無宗教で執り行い、司式者は呼ばずに故人様の好きだった音楽をかけるなどして過ごします。そして、告別式では司式者をお呼びし故人様もしくは家族や親族の宗教・宗派で執り行う方法です。
上記以外にも家族の遺志を尊重するという場合もあります。このように様々な方法で故人の遺志を尊重することができますが、故人の遺志または家族の遺志のどちらかを尊重する場合が多いのではないでしょうか。それぞれの方法に、家庭ごとの考え方や意向に合った葬儀ができる利点がありますから各家庭に合う葬儀方法を選ぶことが重要と言えるでしょう。
無宗教葬については下記のリンク先記事内にて詳しくお伝えしていますので併せて参考にしてください。
するべきことや注意点
家族の宗教が違うことでの葬儀やお墓への影響を考えると事前に家族間の話し合いが重要となってくることがわかります。無宗教で葬儀を執り行う場合も故人の宗教や宗派で葬儀を行う場合も事前に家族で話をしておくと後々安心です。生前に自分の葬儀について家族の話し合いの場を設けたり、エンディングノートなどを書き遺志を遺しておくことで葬儀の際により円滑に準備が進むようになります。エンディングノートには葬儀に関して記入する項目がありますので、どのような宗教・宗派を信仰しているのかなども記入することができます。またエンディングノートは何度でも書き換えることができますし、最近では容易に入手できますからご家族のためにもご用意しておくことをおすすめ致します。※注意点としてエンディングノートには法的拘束力はないという点が挙げられます。※
宗派が違うお寺に葬儀は頼めるのかという問題ですが、同じ仏教でもよりどころとするお経や葬儀の作法が異なるため、特定の宗派のお坊さんが違う宗派での葬儀を執り行うことは基本的にできません。菩提寺や同じ宗派のお寺に葬儀を頼めない場合には、遺族の方はどうしてもご自分や故人と違う宗派のお寺に頼まざるを得ません。このような場合は葬儀社から僧侶やお寺を紹介してもらうことも可能です。ここで違う宗派のお寺に葬儀を頼むときに気をつけたいことについてお伝えしていきます。お寺が運営しているお墓・納骨堂などは宗派が違う方の納骨はできないことも多々あります。また宗旨宗派は問わないという場合も、生前の宗旨宗派は問わない場合でも納骨後にはそのお墓を運営するお寺の宗派のやり方にのっとった供養が行われる場合もあり、先祖代々の宗派と異なるお寺で葬儀を行ったために家族のお墓に納骨できなかったり戒名のつけ直しや葬儀をもう一度行うことになったりすることもあります。墓石や位牌に刻む戒名も宗派が異なると変わってきます。実際に戒名をつけてもらうことにもお金がかかりますので、何度もつけ直してもらうのは現実的には難しくできれば避けたいことです。納骨堂や寺院墓地ごとに異なる宗派への納骨の制限など規定がある場合もありますので、事前にその納骨堂の規定について知っておくことも必要です。
エンディングノートについて詳しくお伝えしている記事がありますので、下記のリンクから併せて参考にしてみてくださいね。
お墓についての注意点
家族間で宗教や宗派が異なると葬儀だけではなくお墓にも影響が出てきてしまいます。ですから、家族間の宗教が異なる場合には家族やご本人がお墓をどうしたいかについても、前もって考えておく必要があります。家族と同じ先祖代々のお墓に入る従来の方法だけではなく故人の宗教や宗派で別々に埋葬するという選択肢もありますし、宗派が違っても家族と同じお墓に入りたい方も多くいらっしゃいます。このような場合は公営の墓地であれば宗旨宗派を問わず使用できます。また、家族の宗教に合わせることもできますが、納骨堂やお墓の許可が出れば分骨するという手段もあります。ただし、別々のお墓に入るときにはそのお墓の費用も家族のお墓とは別にかかります。維持費などもありますのでお墓を別にしたい場合には、費用の準備もあらかじめしておく必要があります。