葬儀に参列されたことのある方の中には、写真や愛用品など故人様にゆかりのある品物が展示されている式を見かけたことがある方もいらっしゃるかもしれません。それらを思い出コーナー(メモリアルコーナー)と言い、近年ではコーナー設置に対応する葬儀社も増えてきている傾向にあり、お見送りの形の中のひとつとして定着しつつあります。
今回の記事では、思い出コーナー(メモリアルコーナー)について詳しくご紹介致します。
思い出コーナー(メモリアルコーナー)の意義
思い出コーナー(メモリアルコーナー)とは、(※以下より思い出コーナーとします)故人様の写真や映像、趣味等で使用していた愛用品などの故人様にゆかりのある品物を展示するコーナーのことです。思い出の品や故人様ゆかりの品物を飾ることで故人を偲ぶひとつのきっかけとなる重要な役割をもっています。
思い出コーナーは葬儀を執り行う意味合いを深める価値があります。家族で出かけた時の写真、よく着ていたお気に入りの服、いつも食べていたお菓子、趣味の道具などひとつでも故人様の感じれるものがあるだけで人それぞれ色々な思い出がよみがえります。思い出コーナーに飾るものはこれでなければいけないという規定はありません。故人様ひとりひとりの個性を表せるものであれば、式場のルール制限面や物理的に飾れる品物であればなんでも飾ることが可能です。中には生前何が好きでどんな趣味があったのかが正直分からないという場合があるかもしれません。その場合であっても「この服を着ていた記憶がある・このコップで飲み物を飲んでいた」等といった些細なことに想えるかもしれない品でも会葬者の方からしてみると、故人様の知らなかった一面を新たに知るきっかけとなるかもしれませんし、思い出話のひとつのきっかけとなる場合もあります。
思い出コーナーは、一般的にはホールの入り口付近に設置されることが多いでしょう。ただし、映像を映し出したり写真は壁に掛ける仕様にもできるなど、その方法は場所や葬儀会社によっても様々です。飾る品物の大きさによっても設置できる位置は異なりますので、設置する品に応じて遺族・葬儀社の担当者で話し合うと良いでしょう。
思い出コーナーの例
思い出コーナーと聞いて一番に思いつくのが写真ではないでしょうか。実際は写真以外にもさまざまな品を飾れます。ここでは、故人の人柄を表す展示例をご紹介致します。
まず初めに、代表的な写真を展示するという例です。遺影には使用できないような故人様が何かを楽しんでいる姿が確認できる写真や故人様が撮られた写真など自由に写真を展示することが可能です。思い出コーナーにおいて主役となるのは写真といっても過言ではない程、故人様の生前をより色濃く偲ぶことができるのが写真です。葬儀社によっては、写真のディスプレイを請け負ってくれるところもあります。遺族や親族がディスプレイをする場合には、何枚か選んだ写真をボードなどに飾り付けて展示し、その他の写真を参列者が自由に見ることのできるようアルバムなどを広げて置くのもひとつのアイデアです。時間と気持ちに余裕がある場合には、写真に対する短い解説や日付を書いたりするとより印象深い思い出コーナーになります。
また、写真ではなく映像を展示するというのも代表的な方法のひとつです。葬儀のためのメモリアルビデオを作成するには写真をデータ加工したり、テロップやナレーション・音楽を付けたりなど技術や心配り・時間も必要とされます。葬儀に間に合わせるために速やかにビデオを完成させなければならないので、お金はかかりますが作業に慣れたプロの手を借りるとより安心でしょう。映像制作にかかる費用は業者によってさまざまですが、葬儀で流すことを想定した5~10分以内の映像ですと相場は概ね二万円から五万円前後といったところのようです。写真をスライドショーのように流すだけの形であっても別途オプション料金が発生する場合があります。またメモリアルビデオの作成や葬儀内での上映に当たって、内容と費用について葬儀社によく確認することは言うまでもなく可能な限り遺族や親族の理解を得て進められると良いでしょう。
また、先に挙げた以外にも趣味や愛用の品物を展示するという方法も思い出コーナーでは多く見られます。例えばバイクや車が好きだった故人様の思い出コーナーでは、実際に運転の際に使用していたサングラスやヘルメット・手袋などの品が良いでしょう。過去には実際に乗っていた愛車であるバイクを展示品として設置した事例もあるそうです。また、車やバイクは走っていたり運転したりするシーンが印象に残る場面ですから、故人様が実際に愛車に乗っている映像や写真などがあればそれらを展示してみるのもおすすめです。会社人間だった故人様の場合、会社での経歴をボードにまとめたり、実際に道具を展示してみたり故人様の働く姿を想像できる思い出コーナーがよいでしょう。毎日着用していた制服や作業着などはなじみのある姿であることが多いですからそのような品もぜひ展示してみましょう。故人様が装飾品が好きだった場合にはアクセサリーや服・カバンなどの装飾品類を実際に展示したり、園芸が好きだった故人様の場合には手入れをしてあるもので育てていた花や木々などを展示したりなど、故人様や家族の気持ちがこもったものであればどんな小さなものでも思い出コーナーにふさわしくないものはありません。もし、展示したいものが沢山あり困ってしまうという場合には、テーマをひとつにしぼって決めると良いでしょう。展示を通し参列者の方々並びに遺族の皆様に思いを馳せていただくこともまた、ご供養のひとつとなります。
注意点など
故人様の人生の中で仕事や飲み会などご家族以外との方との活動が大きな存在を占めていた場合に、日頃から交流がある場合は遺族の手元にはない写真や道具を借りることで故人様の縁を偲ぶ思い出コーナーが作れます。この他にも、参列者の方々が故人様への最後のメッセージを綴ることのできる寄せ書き用の台紙が用意されることもあります。こうした寄せ書きは副葬品として棺に入れるのが一般的です。葬儀には故人と縁の深い方から仕事や居酒屋などでしか付き合いはないという方まで様々な方が参列する場合もあります。葬儀という限定された空間ではあっても、公開された場所になりますから見る人に意図が伝わりやすく故人様の品位をおとしめないような配慮も必要です。特に写真の展示に関しては、周囲の人のプライベートにもできる限り配慮するように心掛けましょう。思い出コーナーを準備する時間は大切な人の心に思いを馳せ寄り添って過ごすことのできる貴重な時間になります。故人様のために気持ちをこめて作った思い出コーナーは参列者や家族の記憶にも深く刻まれるものとなるでしょう。
世界にひとつとして同じ葬儀はありません。それぞれの葬儀があるため、ぜひ思い出コーナーも葬儀の要素のひとつとしてこだわってみてはいかがでしょうか。小さく展示を行いたい方、盛大に展示を行いたい方、家庭によって様々な思いがあります。現実的な問題を解決してくれるサポート係として葬儀のプロである葬儀社の担当者に一度相談してみることをおすすめ致します。