蓮華は仏教の伝来と共に中国からやってきた言葉で蓮や睡蓮の総称でもあります。泥沼に生じて美しい花を咲かせることから、古来より仏の悟りをあらわす仏教のシンボルとして親しまれてきました。お盆のお供え物をはじめ仏事になくてはならない蓮華ですが、色や形にはそれぞれ意味があるのをご存じでしょうか。
今回の記事では、蓮華の種類や特徴について詳しくご紹介致します。
蓮華とは
蓮華(れんげ)は仏教の伝来と共に中国から日本に入ってきた言葉で、仏教においては「尊い仏の悟り」という意味があります。また、一般的には仏教の祖である仏陀の故郷インドを原産国とする「蓮・睡蓮」の総称としても知られています。これらの植物は仏教のシンボルとして尊ばれていて、仏教寺では主要な仏さまが蓮華の形を模した「蓮華座」の上に安置されています。
「泥中の蓮華」「蓮は泥より出でて泥に染まらず」などの古いことわざは、泥(俗世)に生れても大輪の蓮華(悟り)を咲かせる蓮の花姿と仏教理念を重ねたもので、元来は中国の成句から生れています。中国から日本に伝わった蓮華とは、基本的には花が水面に触れない蓮のことであると考えられていて、蓮を清らかさの象徴とするのはヒンドゥー教の概念の影響を受けています。また、観音様が手に持っている一輪の花は「未開敷蓮華(みかいふれんげ)」と呼ばれます。今にも咲きそうな蓮の蕾を表現したもので、悟りを約束されながらも菩薩として働く観音様の姿をあらわしています。修業を経て悟りを得た状態を表現したのが、開花した蓮華を意味する「開敷蓮華(かいふれんげ)」です。
蓮と睡蓮の違い
蓮は6月下旬から8月初旬に咲くハス科の植物で日本でも古くから夏の季語として親しまれてきました。早朝から咲きはじめて数時間でつぼみに戻り開いては閉じるを繰り返しながら3日ほどで散ってしまい、花が散った後の花托(花の付け根)の形が蜂の巣に似ていることから「蓮(はちす)」と名付けられ、転訛して現在の「はす」になったそうです。一方、蓮とは別の植物であるスイレン科の「睡蓮(すいれん)」も同じく蓮華と呼ばれることがあり、蓮華の英名である「Lotus(ロータス)」も睡蓮に由来しています。花の形が蓮に似ていることや蓮に比べて開花する時間が遅いことから眠る蓮として睡蓮の字が当てられました。また、未の刻(13~15時)に花が開くという意味で、日本の在来種には「未草(ひつじぐさ)」という古名もあります。
蓮と睡蓮はどちらも水の中に根を張って水面に葉や花をつける抽水植物です。以前は同じスイレン科に属していましたが、現在では別の系統の花であることが分かっています。花の形状やサイズ感が違うため実際に見比べれば見分けることは簡単ですが、育つ環境がよく似ていることから混同されることも少なくありません。生育初期の段階ではどちらも水中から芽を出して浮き葉となりますが、蓮は上に向かって高く伸びる立ち葉が特徴で葉は表面にツヤがなく円形状であるのに比べて、睡蓮の葉はそのまま水に浮き葉は光沢があり大きく切れ込みが入っているという違いもみられます。
蓮と睡蓮の色
お伝えしてきた様に別の植物である蓮と睡蓮が「蓮華」で一括りにされていることには、さまざまな宗教文化や歴史とも関係が深いようです。
お盆の飾りやお供え物で見かける蓮華の中は白やピンク・水色・黄色といったようにカラフルですがそれぞれの色にしっかりと意味があります。
仏教経典の「摩訶般若波羅蜜経」には、「白蓮華(びょくれんげ)・紅蓮華(ぐれんげ)・青蓮華(しょうれんげ)・黄蓮華(おうれんげ)」の四種類が記述されています。その中でも特に仏教で重要視されているのが煩悩に穢されることのない清浄な仏の心をあらわす「白蓮華」と、仏の大悲(だいひ)から生じる救済の働きを意味する「紅蓮華」で、いずれもお釈迦様の故郷に咲いていた「蓮」です。一方、「青蓮華」と「黄蓮華」は睡蓮のことで、睡蓮にはさらに「温帯種・熱帯種」の二種類があります。青や紫といった鮮やかな色合は熱帯種の特長で古来よりインドで崇拝されていた神々の象徴が後に仏教に取り込まれました。