弔辞とは故人への手紙のことを指します。弔辞は故人と縁が深い方が読むことが多く、孫も例外ではありませんし近年では家族葬が増えてきている傾向からもそういった機会も多いかもしれません。実際に孫代表として弔辞を読むことになったら悩む方も多いのではないでしょうか。
今回の記事では、孫代表として弔辞を行う場合のマナーについて詳しくご紹介致します。
弔辞について
遺族は故人と特に親しかった方に弔辞を依頼します。友人や職場関係者といった家族以外の方を選ぶ場合もありますが、故人との親しさという点では孫も例外ではありませんし、冒頭でもお伝えした通り近年では家族葬が増えてきている傾向も背景にあり、実際に孫代表として弔辞を読む機会も多いかもしれません。弔辞は遺族が「ぜひこの人に読んでほしい」と考えて選んでいるので依頼されたらできるだけ引き受けましょう。
それでは、まず始めに弔辞とはいったいどういうものなのかをお伝えして参ります。弔辞とは故人に贈る最後の言葉であると同時に遺族に対する慰めと励ましの言葉でもあります。故人の功績や人柄をたたえ、遺族への思いやりを感じられる言葉を述べます。かしこまったきれいな文章であるよりも、自分の言葉で表現すると気持ちがより一層伝わりやすいでしょう。
孫という立場なら祖父母に手紙を書くつもりで少しくだけた文章でも構いません。語尾も「です・ます」で無理にそろえる必要はなく「ですね・だよね」といった祖父母に話しかけるような文章を取り入れても良いでしょう。また、葬儀は時間が限られているので、一人当たりの持ち時間は3分前後が目安です。弔辞の長さは400字詰めの原稿用紙2~3枚程度で作成します。書き上げてみると短いと感じる方もいるかもしれませんが、弔辞は簡潔にわかりやすくまとめることが大切です。他の方が聞いたときに理解しやすいように、堅苦しい言葉や専門用語を使わないように意識します。孫が幼く代筆で弔辞を作成する場合は子供が理解しやすい言葉を使って読みやすさも考えましょう。スムーズに読めるように難しい漢字はひらがなで書きます。
弔辞の書き方
弔辞は故人の死を悼む言葉を述べ、故人とのエピソードを話し、結びの言葉で終わります。その他にも故人と自分の関係性や残された者としての決意を述べる場合もあります。孫の立場であれば、祖父母との思い出話を中心に構成すると気持ちが伝わりやすいでしょう。ここからは、弔辞の構成において重要な三つの要素についてお伝えしていきます。
- 故人への呼びかけ
- 一つ目の要素は訃報を知った際の驚き、故人の死を悼む言葉を冒頭で伝えることです。
- 孫として弔辞を読むのであれば、祖父母が亡くなったときの悲しい気持ちや幼い頃から身近にいた人が居なくなったことに対する寂しさを伝えるのも良いでしょう。「祖父・祖母」と呼ぶと丁寧な印象ですが「おじいちゃん・おばあちゃん」といった普段の呼び方のままでも問題はありません。
- 故人との思い出
- 二つ目の要素は大事なことは故人との思い出を中心に構成することです。
- その中に祖父母とどれくらい親しかったかということを盛り込むと、より一層エピソードに深みが増します。例えば「長期休みの度には必ず遊びに行ったおじいちゃんの家」や「両親が忙しかったときにご飯を作ってくれたおばあちゃん」などといった様に故人と自分との関係性も併せて述べます。この様に祖父母との思い出は大それた話でなくとも日常のささいな出来事で構いません。注意点として故人のマイナス面を強調する話は避け、故人をたたえる様な内容にしましょう。
- 故人への別れの言葉
- 三つ目の要素は、弔辞の最後を別れの言葉で締めることです。
- よく使われるのは「ご冥福をお祈りします」や「今まで本当にありがとう」といった言葉です。祖父母との思い出を述べた後、残されたものとしての決意を挟んでから結びの言葉を言うと文章がうまくまとまります。結びの言葉は特に決められておらず、定型文はありません。その為、タブーとされている言葉さえ使わなければどんな文言でもよいとされています。最後に孫として自分の気持ちが伝わる一言を添えましょう。
弔辞の内容を考えはじめると「きちんとした言葉や表現で失礼のないようにしなくてはならない」と構えてしまう方が多いかと思いますが、弔辞の目的は故人に贈る最後の言葉であると同時に遺族に対する慰めと励ましの言葉でもあります。堅苦しい真面目な文章よりも思いを素直に表した皆が理解しやすく飾らない文章の方が喜ばれるでしょう。
思いを素直に読み上げる弔辞は故人やご遺族に気持ちが伝わりやすく好まれますが、作成時に忌み言葉を意識して避ける必要があります。忌み言葉を知らない孫が書いた文章の場合は周囲の方が確認して手直しする必要があります。忌み言葉自体をあまり気にしない方も多くなってきていますが、参列者やご遺族に不快感を与えないためにも避けるべき表現を把握しておくことは大切です。下記の記事内にて忌み言葉について詳しくお伝えしていますので併せて参考にしてください。
弔辞の書き方
弔辞の内容が決まったら次は用紙に清書していきます。弔辞は読み終えた後は自分で持って帰ることはせず祭壇に置き、葬儀が終わった後は遺族が保管します。そのため誤字脱字がないように気をつけましょう。書き損じた時のために用紙は何枚か用意しておくと安心です。ここからは弔辞を書く際のポイントや注意点をご紹介しますので参考にしてください。
弔辞を書くものは正式には奉書紙や巻き紙に書きます。「奉書紙(ほうしょがみ)」とは日本で昔から公用紙として使用されてきた最高級の和紙です。現代では弔辞を書く紙として使う他に香典を包む際にも使用します。文具店や書道用品店で取り扱っていることが多く最近ではインターネットでも気軽に購入できます。実際のところ、日常で使用する機会があまり多くはないため、自宅に奉書紙がないという方も多いかと思います。そういった場合は無地の白い便箋で代用しても構いません。
弔辞は遺族に渡すものですから丁寧な字で書きましょう。自筆が一番良いのですが字に自信がない方は原稿を作って代筆を頼むか、パソコンで入力して作成する方法もあります。縦書きでゆとりをもって文字を書き、上下左右の余白は十分に空けます。一番左に、奉書紙や巻紙の右端から10cm程度の余白をとってから「弔辞」と題を記し、題からさらに余白をとって本文を書きます。本文は、一行ずつ改行して書くと文章も綺麗に見える上、読み間違うこともありません。本文を書き終えたら改行し、少し下げた位置に年月日を入れます。さらに改行して年月日の位置より低い位置に署名をしましょう。便せんを使用した場合は文末に年月日を記載して署名します。書くものはボールペンではなく薄墨を使います。本来は墨を磨って筆で書きますが筆を持っていない方や筆で書くのが苦手な方は、薄墨のペンでも構いません。
弔辞の包み方については奉書紙の場合は、まず半分に折りさらに三つ折りにした後に上下の端を2つに折ります。巻紙の場合は、開きながら読めるように後ろから巻きます。そして奉書紙の中央に弔辞を書いた紙を置いて、右、左の順に左前になるように折ります。次に上下を裏側に折って「弔辞」と表書きします。便せんを使用した場合には、白い封筒に「弔辞」と記載して持参するようにします。
弔辞を書き終えたら、人前で読むので緊張することも考えられますから、葬儀の時にスムーズに読めるよう声に出して練習をしておきましょう。いつもよりゆっくり話すことを意識し、一言ずつ丁寧に読み上げていきます。練習中に発音しにくい言葉があれば、他の言葉に変えておくと安心でしょう。棒読みにならないよう気を付け、はっきりした口調で話し、声は低めに出すようにします。練習の時は誰かに聞いてもらい早口になっていないか聞いてもらっても良いでしょう。一人で練習するのであれば、録音して後で聞き返してみるのもおすすめです。