お墓にお参りに行く際、供える花の準備は欠かせません。墓地近くの花屋には様々なお供え用の花が販売されていますが、選択肢が多いからこそどのような花を選ぶべきなのか悩む方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回の記事では、お墓に供えるお花の選び方について詳しくご紹介致します。
お墓に供える花の選び方
お墓に花を供えお参りをすることは、故人の冥福を祈り感謝の気持ちを表すという意味があります。意味だけをとれば故人が喜ぶ花であればどんな花でも問題ないという捉え方もあるかもしれませんが、選び方の基本を知っておくと良いでしょう。
お墓に供える花というと、一般的には菊が知られています。菊が選ばれる理由のひとつとしては、季節に左右されることなく一年中生産される点です。値段の変動もなく安定した価格で手に入るためお供えの花に向いている花と言えるでしょう。それだけでなく、菊は日持ちが良いことに加えて枯れても花びらが散って周りを散らかすことがないという特徴もある上、赤や黄・白・ピンクなどといった色の種類も豊富であることも選ばれる理由と言えます。白い菊の花言葉のひとつには「ご冥福をお祈りします」という言葉があることもお供えの花として最適とされている理由です。
菊の他には、カーネーションやグラジオラスやリンドウも良いでしょう。カーネーションは母の日のイメージが強いかもしれませんが、菊と同様、年間を通して生産される花で日持ちのする花のひとつである為お供えに向いています。色のバリエーションも豊富できれいな色が多いのも特徴です。母の日に因んでお供えにカーネーションが選ばれるとも考えられています。グラジオラスやリンドウは夏のお供えの花としておすすめです。グラジオラスは暑さに強く色が華やかで多彩なのが特徴です。色合いを考えて組み合わせやすい点もお供えに選ばれる利点でしょう。青紫のリンドウは群生せずに咲く凛とした姿からもお供えに好まれるようです。
また、お墓には左右二つ花立てがあるので、左右対称に花を供えることになります。お墓参りは故人やご先祖様を偲び感謝の気持ちを表すという意味があることから白や紫の花がメインで使われる葬儀や法事とは違い、お墓に供える花は故人の好きな花や華やかな色合いの花でお墓を彩ることが好ましいとされています。日本では花の本数を3・5・7の奇数で飾ることが一般的です。花の色も全体的に3色から5色を組み合わせるとバランスよく飾ることができます。色目でいうと、白・黄・紫の3色や、白・赤・黄・紫・ピンクの5色を組み合わせることで上品さと華やかさを兼ね備えたバランスになるでしょう。ただ、故人が亡くなってから日が浅い場合は、白や紫を中心にした色調を選ぶことが好ましいです。お墓参りに供える花は、お供えする時期や心情に合わせて選ぶことが一番大切であると言えます。
また、お供えの花には、櫁(しきび)を添えることも良いでしょう。櫁とは、古くから葬儀に使われている植物です。強い匂いや毒を持っていることから虫除けや動物除け・魔除け・お清めに利用されてきました。また、櫁のスッキリとした香りは抹香というお香のひとつとしても用いられています。抹香は仏像や仏塔に塗られたりお焼香にも用いられたりするため、仏事には進んで用いると良いとされています。ただ、ひとつ注意が必要なのが毒を持っているためお墓参りの際に子供やペットを連れている場合、誤って口に入れないように気をつけましょう。
ここまでは、お供えに向いている花についてお伝え致しましたが、実際にお墓に供える花には特別な決め事はありません。周りへの配慮を忘れないことに加え、後にお伝えするようなお供えには不向きな花を選ばなけらば、色のバランスを考えて花を選んだり季節の花を選んだりと選び方自体は自由です。ただし、地域の習慣がわからない場合やどの花が最適かどうか迷ってしまう場合には、以下でご紹介するいくつかの点を目安にすると良いでしょう。
- 供える花の選び方の目安
- 1束の料金を目安にする
一般的にお墓にお供えする花の金額は1束500円から1,000円程度で販売されています。お盆やお彼岸の期間は花の値段は高くなりますが、金額の目安を頭に入れておけば選びやすいでしょう。花を自分で選ぶことが難しい場合は、花屋で希望金額や用途を伝えるとそれに合わせて選んでくれるため、花屋さん選んで貰う方法も効率が良いでしょう。お墓にお供えする旨を伝えておけば、長持ちする花や水あげしやすい花などバランスを見ながら組んでくれるはずです。 - 仏花用に束になった物を選ぶ
花屋だけでなく、スーパーでもあらかじめ仏花用に作られた花束が販売されています。自分で選ぶことが難しい人やマナー違反に不安がある場合は、作られた花束から選ぶと安心です。売店のあるお墓や霊園ではロウソクや線香と一緒に仏花を販売していることが多いですので、販売が確認できれば現地で購入しても良いでしょう。 - 故人が好きだった花を選ぶ
お墓参りでは故人を偲び感謝の気持ちを表すことから、お供えには故人の好んだ花を選ぶことが最適と言えます。好きな花までは記憶にない場合、好みの色相の花を供えても喜ばれるのではないでしょうか。 - 造花
一般的に、お墓にお供えする花は生花でなければならないと考える方もいらっしゃるかと思いますが、お供えには造花でも問題ないとされています。お供えの花は「長持ち」や「色合い」で選ぶことが大切です。造花であればどの季節でもすぐに枯れることなく美しいまま保つことができますし、お墓参りに毎日訪れることができず枯れた花の後片付けが気がかりな場合も造花は合理的です。ただし、造花のお供えを好まないという考え方を持つ方や地域・宗派もありますので、供える前にお寺に尋ねてみると安心でしょう。
供える花に向かない種類
お墓参りでは故人の好んだ花を供えることが一番の供養であるとも言えますが、お供えには不向きな花の種類がある点も覚えておきましょう。お墓参りには自分たちだけではなく、他にもお墓に訪れる人がいるため、配慮を忘れないことが大切です。それでは、実際に供える花に向かない種類をみていきましょう。
- トゲのある花
- お墓に供える花はトゲのある花は敬遠すべきだとされています。トゲのある花の種類にはバラやアザミなどが挙げられます。なぜトゲのある花がお供えに向かないかというと、怪我をする可能性があるという理由やお墓に眠る故人やご先祖様に対してトゲのある花を捧げることが好ましくないとされているからです。トゲのある花はお供えの際だけでなく、お墓を管理する人や片付けて次に花を供える人に対しても配慮すべき点と言えます。
- 故人が生前好んだ花がバラであったため、どうしてもバラを備えたい場合はトゲを外すなどの対処を行いましょう。
- 強い香りのある花
- 強い香りがする花もお墓に供える花としては適さないとされています。香りの強い花の種類を言うとユリやクチナシが挙げられます。香りが強い花は、その匂いに虫が集まってくることや生々しい花の匂いがお供えに相応しくないという考え方から避けた方がよいと考えられています。また、ユリに関しては黄色い花粉が墓石やお墓の周りを汚す可能性があることにも注意が必要です。
- ユリの花は長持ちする利点から花屋やスーパーなどで仏花に組まれて販売されていることが多いですが、お供えに用いる場合は避けるか花粉を除去したものを選んだり蕾のないものを選ぶと無難でしょう。
- 毒を持つ花
- 毒を持つ花もお墓に供える花としてはそぐわないとされます。毒を持つ花の種類は、スイセンや彼岸花・スズランなどが挙げられます。彼岸花は、名前を見るとお供えに向いているようにも思えますが毒性が強いため注意しましょう。
- 毒を持つ花はお供えする本人や片付けする人に危険が及ばないように配慮し避けるべきです。毒が含まれる部分はその花によって違いますので、多くの人が訪れるお墓では危険にさらす可能性のある花は置かないことが大切です。
- 散りやすい花
- 花びらや花粉が散る花もお墓に供えるにはおすすめ致しません。花びらでお墓周りを散らかしたり花粉がついてお墓や訪れる人を汚したりするため、迷惑をかける懸念が考えられます。花びらが散りやすい種類の花は椿やサザンカなどが挙げられます。特に椿は花ごとボトリと落ちてしまう特徴があり首が落ちるイメージを想像させるので不向きといわれています。花粉が飛び散りやすいユリは、供える前に花粉を予め取っておくなどの対処が必要でしょう。
上記で挙げた花については、絶対にダメという訳でありません。考えられる欠点を考慮しつつ、故人様が喜びそうな花を選べると良いですね。
神道と仏教での違い
仏教でのお墓参りは一般的に認知されていますが、神道のお墓参りに関しては馴染みが薄いのではないでしょうか。日本において古くから伝わっている八百万の神様を信仰する神道でも、仏教でのお墓とは特に違いはなくお墓参りも故人やご先祖様に感謝するという意味は変わりません。ただし、神道では「死は穢れ」とみなすため、お供えの花に関しては考え方の違いがあります。ここからは、神道のお墓にお供えする花についてご紹介します。
仏教ではお墓参りに花をお供えしますが、神道の場合は「榊」をお供えすることが一般的です。榊の漢字には「木」と「神」が合わさっていて、神様と関わりのある神聖なものと捉えていることが神道で使われる理由です。また、榊が選ばれる理由のひとつに一年を通して緑が鮮やかで葉が枯れにくい点も挙げられます。神道では仏教のように線香をあげる行為はなく、その代わりにロウソクに火をつけ榊をお供えします。
神道では榊を供えることが慣例です。ただし、地域やそこでの習慣の違いから仏教のお供えの作法と明確な違いがないところもあります。今の時代では地域や家庭によって花や食べ物を供える習慣もあるようです。