葬儀に参列する際には平服で参列する機会がある場合もあります。意外と平服がどういう意味なのかをご存知ない方も多いのではないでしょうか。平服と調べても色々な解釈がある事に加え、喪服とも情報が錯綜していることも多く更なる混乱を招いている状況があるようです。
今回の記事では、葬儀における平服について詳しくお伝え致します。
平服とは
平服(へいふく)とは「ふだん着ている衣服。また、その服装。ふだんぎ⇔礼服。[補説]冠婚葬祭の招待状などで「平服でご出席ください」とある場合は、ふつう略礼装またはそれに近い服装を指し、カジュアルウエアは含まない。」と小学館デジタル大辞泉ではされています。
辞書を基に解釈すれば平服とは普段着となりますが、補足部分を考慮すると平服での案内がある場合であったとしても、カジュアルウエアとなる普段着という意図ではないのが一般的な捉え方となっています。例えば、冠婚葬祭の場にカジュアルウエア…Tシャツやデニム、サンダルやスニーカーを着用した場合、非難の的になることは想像がつくかと思います。一般的なマナーとして時間・場所・場面に合わせた服装が求められますから、平服は事実上の意味として「堅苦しい服装でなく、若干格式を下げた装い」と考えるのが相当です。本来の意味と実際の言葉の使われ方に差があることにより、平服の考え方について混乱を招いているようですが、現実的には「平服=普段着ではない」ことに注意しておきましょう。
平服の対義語は礼服(式服)になることをここまでお伝えしましたが、礼服は格式別に「正礼装・準礼装・略礼装」に分類されています。ドレスコードと呼ばれる使い分けがなされ、葬祭出席時のみに使用できるものまたは冠婚葬祭以外の儀式出席時に使用できるものを葬儀で着用する場合に喪服となります。礼服の一種である喪服は弔意を表し、儀式に相応しい厳粛な空間を作り出すために着用する目的があります。お洒落など自己主張をするために喪服を着用するものではないという点に注意が必要です。
平服を着用する場合のマナー
お別れ会、葬儀告別式前後などで「平服でお越しください」といった旨の指示がなされている場合、平服を選ぶと良いでしょう。こういった指示がなされている場合は、堅苦しいイメージの喪服ではなく少し柔らかい印象を与える服装での参加を希望されています。先にお伝えした内容と重複する点ではありますが、注意したいこととして「どのような服装でも良いという意味ではない」ということを理解しておく必要があります。いざ会場に着いた際に、自分だけ浮いた服装をしていてたなどという事は避けたいところです。大切な方との別れの会であることを念頭に置き、慎重で常識的な服装選びをしましょう。
お別れ会や葬儀告別式前後などで平服を着用する場合、男性は黒をはじめとした暗色のスーツに白いシャツ、ネクタイは黒やダークグレーといった落ち着いた色でまとめましょう。なるべく、暗めで地味な色を選ぶのがポイントです。模様なども入っていない方が好ましいとされています。女性の場合は黒や暗い色のスーツやワンピース、アンサンブルを着用します。会場にもよりますが、温度に合わせて調節のできる服装が無難でしょう。男女ともにダークカラーを主にし、頭の先からつま先までシンプルに統一することが無難です。平服ながらも場に応じた印象になるよう意識しましょう。また、装飾品については光り物はタブーとされていますので、アクセサリーはもちろんのこと、ベルトや付属品・小物にまで気を配る様にしておきましょう。
通夜式の参列は平服で良いのか
「通夜式に礼服で訪れるのは、不祝儀に新札を入れるのと同じように訃報を予定して前もって用意していたようで無礼にあたる」という意見を耳にしたことがある方も多いかと思います。この事から、通夜式=平服という考えに至り疑問に思われる方が多くいらっしゃいます。現代は昔とは違い、各自がスマートフォンなどといった連絡手段を持ち、訃報についても全国瞬時に伝わる便利な時代です。事前に知らせが入るため、通夜式についても喪服での参列が一般的となってきている傾向にあります。しかし、通夜式は喪服が一般的でありマナーだと一概に言いきれないところもあるのです。首都圏であれば通夜式に喪服を着て参列される方が多いですが、地方になりますと平服でそのまま故人様と最後のお別れをされるというところもあります。地域のしきたりなどを詳しい方に伺えることがベストですが、通夜式に参列する際はどのような服装が適しているのか、一般的なマナーをここからはお伝えし致します。男性、女性、子供とそれぞれ適した服装は異なりますので個々にマナーを紹介いたします。
首都圏などにおける通夜式は喪服を着て参列される方が多いですので、男性は喪服としてブラックスーツの着用が基本です。光沢のない生地で落ち着いた濃い黒色が無難です。男性の正装は、本来であれば昼はモーニングコート、夜は燕尾服ですが、現在は特別な家柄の葬儀や社葬など特別なケースでのみ喪主や葬儀委員長が着用することがあるという程度で、一般的な葬儀では使われることはありません。ブラックスーツは略礼服に該当しますが現在における葬儀の場においては正しい服装です。ジャケットは、シングルでもダブルでも好みで選択して差し支えありません。そのほか、白のワイシャツ、黒ネクタイ、黒靴下に黒革靴が適切です。和装の場合には、黒羽二重の紋付羽織袴となりますが、実際の葬儀の場で見かけることは稀有なのが実状となっています。
女性にも正装としてモーニングドレスやアフタヌーンドレスなどがありますが、日本においては一般的ではありません。通夜式の参列時には喪服としてアンサンブル、ワンピース、スーツの着用が適切です。いずれの装いでも色は黒で、男性同様に光沢のない生地を選びましょう。インナーはブラウスまたはカットソーで、ストッキング・パンプスも全て黒色です。和装では女性の場合、黒無地染め抜き五つ紋付の着物を喪服として着用します。
子供の場合、幼稚園や学校の制服があれば制服を喪服として着用します。制服がない場合には、黒や紺など落ち着いた服装で揃え、男子であれば白いポロシャツに黒のニット・黒の半ズボン・黒のローファー、女児であれば白いブラウスに黒か紺のブレザー、ワンピースに黒のパンプスなどです。靴はローファーやパンプスを所有していないこともあるかもしれませんが、小さいお子さんであれば黒に近い色合いのスニーカーを履いているケースも多く見られます。
地域的に通夜式で喪服を着用はしない場合の服装については、仕事からそのままお通夜に向かわれる方もいらっしゃるでしょう。男性の場合、通常のお仕事で使われているような紺かグレーのスーツに白い シャツ、黒か紺のズボンでかまいません。最低限のマナーとしてネクタイだけ黒に変えましょう。ノーネクタイは好まれません。
女性の場合は可能な限り地味な黒やグレー系のワンピースやセットアップ、スーツなどが良いです。スカートの場合はひざ下からふくらはぎくらいまでの丈が一般的です。ストッキングについては、黒が好ましいでしょう。
平服の場合、どのような服装がマナー違反にあたらないのか不安に思う方が多いかと思います。訃報の知らせが当日などで通夜式までに時間がない・喪服に着替えられない場合や用意できない場合は平服で、知らせから一日以上空くのであれば喪服の用意も可能ですから、喪服を着用すると良いでしょう。喪服の用意が出来るようで平服とどちらにするのか迷われている場合であれば、基本的には喪服を選択すると無難でしょう。
大切なのことは服装ではなく、故人様を偲び、お別れをしたいという貴方の気持ちです。大きく場違いな服装を選ばない限りは、心遣いや気持ちは周りにいらっしゃる方や遺族様にもしっかりと伝わることでしょう。