古くより日本の地に根付く神道。どのような宗教なのかはご存知でしょうか。
今回の記事では、神道について詳しくご紹介致します。
神道とは
神道とは、日本で古来から信仰されてきた原始的信仰が外来宗教である仏教や儒教の影響を受け変化し、日本人の慣習や天皇の祭祀など様々な形に展開したものとされています。また、民族歴史の中で自然に生まれた民族宗教とされています。一般的な宗教には教祖や経典といったものが存在しますが、神道は教祖や経典が存在しないことも大きな特徴です。
通常、宗教には神が存在します。そして多くの世界宗教は一神教で、唯一の神を信仰しています。代表的な宗教と神を挙げると、キリスト教であればキリスト・ユダヤ教であればヤハウェ・イスラム教であればアッラーといったものです。日本の神道は多神教でかつ祖霊崇拝であるため、あらゆる自然や一族の先祖・大きな貢献をした特定の人物、怨霊など様々な神が存在し、このように存在する神道における神のことを「八百万の神」としています。
神道の起源は古く、日本最古の歴史書と言われる「古事記」には、神道に通じる日本神話が複数掲載されています。さらに、「日本書紀」には神道という用語が初めて登場し実際の信仰の起源はこれより数世紀前…有史以前にも遡るといわれています。
神道と仏教は共に古代から日本に存在する宗教だと考えられており、神道と仏教を区別していない方も多いのが実状です。仏教はインドで生まれ、中国を伝い日本に伝わったものですので、厳密に言うと仏教は外来宗教に該当します。しかしその後、仏教は日本でも独自に発展し、初期の段階から「神仏習合」つまり仏教と神道は部分的に融合しながら発展していったとされているため(実際に同じ名前の神様と仏様がいます)神道と仏教の区別がつきにくいような背景になっているのではないでしょうか。
神道の特徴
神道は地上の森羅万象に神が宿るという考え方が元となっています。「祖先崇拝・自然崇拝」が基本となり、八百万の神を崇拝します。神道において、亡くなった人は家族を見守る祖先神(そせんしん)になり、死後の世界で家族や子孫を見守っていると考えられています。そして、神道を語る上で欠かせないのが天皇の存在です。天皇は、八百万の神の中でも最高の神格を有する「天照大神(あまてらすおおみかみ)」の末裔と考えられています。皇室の儀式が、神式でおこなわれているのはこの為です。
また、神道と言ってもいくつもの種類(仏教で言うところの宗派)があります。主な種類は以下の通りです。
- 神道の代表的な種類
- 神社神道…一般的にイメージされる神道。神社を中心に信仰される。
- 皇室神道…皇室による大嘗祭・新嘗祭などの祭祀を行う神道。
- 教派神道…明治時代以降に誕生した「金光教・天理教など」の教祖の神秘的体験から生まれた神道や、伊勢神宮・出雲大社などの古来から続く神社から生まれたもの。
- 国家神道…明治維新から第二次世界大戦までの国家と結びついた神道。
- 復古神道…江戸中期から明治までの外来宗教である仏教や儒教の影響を排した神道を復活させようとした神道。
細かく分けると他にも様々な神道の流れが存在しますが、大きく分けると以上の五種類となります。
神道を信仰していなくても七五三や初詣に神社を訪れたことがある方は多いかと思います。神道の信仰拠点である神社の特徴と役割についてみていきましょう。神道の神々を祀る社である神社は全国に約8万5,000社あるとされ、その多くを民間法人である「神社本庁」が統括しています。神社本庁は政府の省庁とは関係がない民間の宗教法人で渋谷区代々木に本部を置いています。また、先に多くの神社は神社本庁の傘下にあるとお伝えしましたが、伊勢神宮は別格の「本宗」としている・靖国神社、日光東照宮、伏見稲荷大社、その他教派神道などは神社本庁の傘下になっていないなどの例外もあります。神社の原形は、神様が降臨すると考えられた木や岩の所に仮設された建築物と考えられています。その後、時代が進むにつれて「やしろ」「みや」などと呼ばれる常設の社殿が造られました。神道の聖職者は「神職」「神主」「巫女」と呼ばれ、神社で袴・烏帽子(えぼし)をまとい、祝詞(のりと)を唱えます。祝詞とは、神事において神主が神前で唱える言葉のことです。
葬儀(神葬祭)の特徴
仏教の葬儀は故人を極楽浄土に送るために執り行うのに対し、神道の葬儀は故人を家に留め死の穢れ(けがれ)を払い、守護神となってもらうための儀式とされています。
穢れとは、清潔さや純粋さなどを失うことで死・血・悪しき事などに共なって生じるとされており、物質的に触れずとも精神のみでも伝染するとみなされ、神聖な領域である神社で神葬祭がおこなわれることは基本的にはありません。日本では明治以前の檀家制度の流れからほとんどの葬儀が仏式で行われるようになり、神道の葬儀は全体の数%に留まっています。
ここからは神道の葬儀である神葬祭の流れを簡潔にご紹介致します。
神葬祭では、一日目におこなわれる「遷霊祭(せんれいさい)」で、仏式の位牌にあたる霊璽(れいじ)に故人の霊魂を移し、二日目に「葬場祭(そうじょうさい)」を執り行い、死の穢れを清め故人を家の守護神として祀ります。戒名は、仏様の弟子になった暁にもらえる名前のことなので、神道において戒名は存在しませんが、「諡(おくりな)」というものが存在します。諡は人物の帰幽後(神道において人が亡くなること)につけられる名前のことを指し、この名前には生前の徳や行いを称える意味が込められています。神道において、命はいつか神様に返さなければならないものとされいて、命を返すタイミングが死であり、諡を持って神の世界に再び戻ると考えられているのです。そのため、神道では仏式の位牌にあたる霊璽や、奥津城と呼ばれるお墓に名前を刻む際に必ず諡を加えることが決められています。
また、神道では祭祀の際に香を焚くことはないため、香典という表現は適切ではありません。神道において香典にあたるものは「御榊料・御玉串料」「御神前」などとされていますので注意が必要です。