近年では宗教観が気薄になってきている傾向があり、無宗教の葬儀を執り行うケースも決して珍しくはありません。しかし、無宗教葬儀という言葉は知っているものの詳しいことがわからないという方は多くいらっしゃるかと思います。中でも香典マナーは疑問に思う方も多くいらっしゃるかと思います。
今回の記事では、無宗教葬の香典マナーについて詳しくお伝え致します。
無宗教葬とは
無宗教というのは信仰している特定の宗教や宗旨宗派がないという意味です。神様や仏様といった存在そのものを否定しているわけではありません。
無宗教葬儀の特徴と式の流れについてですが、無宗教葬とは、特定の宗旨宗派の儀礼や考え方にとらわれない葬儀のことです。仏教でいう読経・キリスト教での讃美歌斉唱・神道による玉串奉奠などといった宗教宗旨の形式にとらわれることのない葬儀スタイルであるため自由葬と呼ばれることもあります。設営や演出を含め、好みの内容にアレンジできる為に故人を想起しやすく「その人らしい」葬儀を実現できます。故人が好んで聞いていた音楽をかけたり、故人の動画などを見ながら参列者が思い出を語り合うなどすることも可能です。
このような特徴から葬儀の内容について故人の希望がある場合には無宗教葬を選ぶことで希望に沿った葬儀を行いやすくなります。無宗教の葬儀には決まった形式がありませんし伝統的な儀礼や式次第に縛られることなく、自由な内容や構成で葬儀を営むことができます。言い換えると定型が存在しないということでもありますので、葬儀の流れを考えなくてはいけません。
- 一般的な無宗教葬の流れ
- 受付を済ませた参列者が入場し、司会者が開式を宣言
- 読経などを行わず、代わりに全員で黙祷し故人を弔います
- 故人の好きだった音楽で献奏しご冥福を祈る
- 故人の写真や映像を見て思い出を振り返るなどして故人を偲ぶ
- 弔電紹介
- 遺族代表が参列者に挨拶
- 参列者が順番に花を供え、故人とお別れをします
- 司会者の言葉で閉式
- 出棺し、火葬場へと移動
先にもお伝えした通り無宗教葬は自由度が高く、よりその人らしさが反映される葬儀形式と言えますから、上記でお伝えした流れはごく一般的なものですので、あくまで参考程度に留めておいてください。
無宗教葬の香典マナー
ここまででお伝えしてきたように、無宗教葬の内容自体は遺族や親族が自由に決められますが、参列する際の香典はどうすれば良いのか悩む方もいらっしゃるかと思います。自由度が高い葬儀とはいえども、香典の金額や表書きといった最低限のマナーは守らなければなりません。ここからは、無宗教葬の香典マナーについてお伝え致します。
まずは無宗教葬に香典は必要なのかという問題ですが、結論から申し上げますと無宗教の葬儀でも香典は必要です。どういった葬儀形式であったとしても喪主側から香典不要などの案内がなければ香典を持参することがマナーです。
続いて無宗教葬の香典相場についてですが、無宗教葬の香典相場は仏教葬儀とほとんど変わりありません。香典の金額は故人との関係性やご自身の年齢によって違いがあります。また、香典の金額を決める際には数字に気をつけましょう。4は「死」を、9は「苦」を連想させるため、香典に包む金額としてはふさわしくありません。割り切れる数字も故人と遺族の縁を切るという意味につながるので避けましょう。香典の相場については以下の記事内にて詳しくお伝えしていますので併せて参考にしてください。
最後に無宗教葬の香典の表書きについてですが、無宗教葬の香典の場合も表書きは必要です。使用する香典袋について決まりはありませんが、柄ものや派手な色の袋はふさわしくありません。白い無地の封筒か不祝儀袋に包むのが一般的です。仏教では表書き「御霊前」と記入するのが一般的ですが、仏教以外でも多く用いられており、無宗教でも表書きとしても使用できます。御霊前ではなく「御香典」や「御花料」と書いても良いでしょう。封筒の下部には送り主の氏名をフルネームで書きます。連名の場合、右から順に年齢や身分の高い方の名前を書きましょう。夫婦の場合、名字はひとつで問題ありません。四名以上で香典を包む際には「◯◯一同」を書き、別紙に全員の住所・名前・金額を記入し、袋に入れて渡しましょう。また、表書きや名前は薄墨で書きます。
香典は参列した際に、受付で渡しましょう。「このたびはご愁傷様です」と一言添えて渡すのがマナーです。無宗教でも忌み言葉には気をつける必要があります。「たびたび」や「ますます」のような繰り返す言葉は、「嫌なことを繰り返す」という意味があるため避けましょう。忌み言葉については以下の記事内にて詳しくお伝えしていますので併せて参考にしてください。
また、無宗教葬に限った話ではありませんが、遺族の意向で香典を辞退される場合があります。その際には、あらかじめ案内があるはずですので、遺族から香典辞退の申し出があった場合、香典を渡す必要はありませんので香典を持参しなくともマナー違反にはあたりません。辞退する旨の案内があっても気遣いとして香典を送る方もいらっしゃいますが、遺族の意向を尊重することが大切ですから控えた方が良いと言えるでしょう。
無宗教葬のマナー
無宗教葬は自由度が高い葬儀とはいえ厳粛な儀式なことに変わりありません。遺族や親族の方々にとって不快な思いをさせることがないように、香典マナーと併せてあらかじめマナーや作法を学んでおくと良いでしょう。ここからは、無宗教葬に参列する際の服装や身だしなみ、献花の作法をご紹介致します。
まずは無宗教葬に参列する際の服装マナーについてですが、無宗教葬の場合であっても基本的に喪服で参列します。遺族から「平服でお越しください」といった案内があれば、地味な色合いの略喪服で参列しましょう。平服については以下の記事内にて詳しくお伝えしていますので併せて参考にしてください。
男性の喪服はブラックフォーマルスーツが一般的です。ボタンはシングル・ダブルどちらでも問題ありません。スーツの中には無地の白いシャツを着用します。白でもストライプ柄や織柄のシャツは葬儀の場にはふさわしくないので避けましょう。ネクタイ、靴下、靴は黒で無地のものを選びます。ネクタイピンやカフス・靴の金具のような光るものは避け、地味でシンプルな服装で参列しましょう。
女性の喪服は黒のワンピースかアンサンブルが一般的です。ジャケットやアンサンブルのインナー、スカート、靴もすべて黒で統一します。スカート丈はワンピース・アンサンブル共に膝丈が望ましいでしょう。また、葬儀の服装のマナーでは肌の露出は不謹慎にあたりますので、夏場であっても素足ではなく、薄手の黒色ストッキングを着用しましょう。靴は低めのヒールやパンプスを選びます。ピンヒールやラメ入りの生地、ビーズなどの派手な装飾がされているものは避けましょう。
服装と同様、無宗教葬儀でも身だしなみを整えるのがマナーです。身なりをきちんと整えてから葬儀に参列するよう心がけましょう。男性の身だしなみで最も目立つのが、シャツやスーツのシワです。シワがあるスーツやシワのあるシャツはだらしなく見えます。参列前にはアイロンがけをしておきましょう。髪型は清潔感のあるナチュラルな雰囲気であれば問題ありません。ロングヘアの場合は結ぶなどしておくと印象が良くなります。また、腕時計やピアスといった装飾品も外しましょう。葬儀の場で装飾品を着用するのは好ましくありません。指輪であれば結婚指輪のみにしておきます。
女性の身だしなみで最も注意すべきなのは肌の露出です。夏場であれば五分丈の半袖や袖がシースルーのワンピース、アンサンブルでも問題ありません。化粧はナチュラルメイクを心がけます。長い髪は、黒いシンプルなゴムで一本に束ねると良いでしょう。バッグは黒い布製の手持ちのかばんが基本です。革や合皮のバッグは殺傷をイメージさせる為ふさわしくありません。
仏教葬儀でいうところのお焼香の代わりに、無宗教葬では献花を行います。仏教葬儀で用いられる花は菊やカーネーションが一般的で自由度があまり多くありません。しかし、無宗教葬では花の種類や色に制限がないので故人の好きだった花を選べるのが特徴です。
献花は一人ずつ行い、右手で花の根元を上から抱え、左手は下から花に添えるように持ちましょう。祭壇まで進んだら、遺族に向かって一礼します。次に祭壇を向き、花の根元が祭壇に向くように時計回りに270度回転させ、静かに花を手向けましょう。手を合わせて黙祷したら、再度遺族に一礼し席に戻ります。