葬儀や通夜の受付を依頼された際、香典の受け取り方がわからなくて戸惑った経験がある方もいらっしゃるのではないでしょうか。香典の受け取り方のマナーに加えて、対応方法や受け答えにもマナーがあります。
今回の記事では、香典の受け取り方について詳しくお伝え致します。
葬儀の受付を依頼された場合
葬儀において受付を依頼された方にとって、どのように受け答えしたらよいか悩むことでしょう。受付は近所の方や同僚・友人など近しい関係にある方が亡くなった際に依頼されることがあります。受付になると一般の参列者とは異なり、様々なフォローをする必要があります。そこで、対応可否を踏まえた上で依頼に対する返事をしなくてはなりません。また、返事をする際も失礼にあたらないように配慮することが大切です。受諾可能な場合と対応が困難な場合それぞれの返事の仕方についてまずは確認していきましょう。
遺族が葬儀の受付を依頼する相手は、それなりの関係性があり遺族から信頼を置かれた方と言えるでしょう。特別な事情がない限りはできるだけ引き受けることをおすすめ致します。直接遺族から依頼された際は、一言お悔やみの言葉を添えて引き受けることが大切です。例えば「この度はお悔やみ申し上げます。私でよろしければ受付をお受けいたします」といった言葉を添えればよいでしょう。また、依頼を受ける際は葬儀会場や日程などの重要事項を後から失念しないようしっかりメモをすることが重要です。
受付を依頼されたとしても、事情によっては止むを得ず断らなければならないことも考えられます。このような場合は、できるだけ早い段階ではっきりと断ることが大切です。返事を引きずってしまうと、遺族が他の人に手配することもできなくなりますので迷惑がかかってしまいます。受諾できない旨を伝える際は、遺族の気持ちに寄り添って配慮することが大切です。例えば「この度はお悔やみ申し上げます。ぜひお受けしたいところですが、止むを得ない事情がありどうしてもお受けすることができません。〇〇様のご冥福を心よりお祈りいたします」といった言葉を添えた上で、他に代理を頼めそうな人がいる場合は提案してみるのもよいでしょう。
香典の受け取り方のマナー
香典を受け取るシチュエーションは、遺族として受け取る場面あるいは受付として受け取る場面が大半です。遺族として受け取る場合は「恐れ入ります」と一言添える受け取り方が通例であり、普段用いる「ありがとうございます」はTPOをわきまえていない言葉としてタブーとされています。このように、遺族の場合も気を払う必要がありますがそれ以上に受付をする場合のほうが気を払うことは多くなるでしょう。受付をするということは一時的とはいえ遺族側の一員となります。また、お金に関わる作業でもあるため、マナーを踏まえて丁寧に行わなければなりません。遺族の立場に立っていることを念頭に置いて、スムーズに対応するように心がけましょう。
香典の受け取り方を具体的な流れに沿って順番に説明致します。
香典を納受する前に、芳名帳の記帳をお願いする必要があります。喪主は芳名帳に書かれた名前や住所を元に香典返しの準備をします。そのため、参列者には漏れなく記帳してもらわなければなりません。中には、香典を渡してすぐに会場へ入ろうとする参列者も見られるため「お名前とご住所のご記入をお願いいたします」といった一言をかけてご案内しましょう。場合によっては、受付ではなく別の場所で芳名カードに記入していただく形をとることもあるのでわかりやすい案内と丁寧な言葉で伝えることが大切です。
芳名帳に記帳していただいたら、香典を納受します。実際に納受するのは遺族であるため「お預かりします」という言葉をかけるのが適切な返事です。その際は両手で納受するのがマナーなので、片手で受け取らないように注意しましょう。芳名帳に記帳する場所が受付から離れている場合は、記帳前に香典を納受するケースもあります。また、納受した香典は会計係に渡したり特定の場所に保管したりしますが、参列者が受付にいる間は失礼にあたるのでその場を去られた後に行うのがマナーです。
香典に対する返礼品は、香典を納受していただいた直後に渡すのが通例です。返礼品をお渡しする際は「こちら御礼の品でございます」といった一言を控えめに添えて手渡します。香典返しを後日に行うケースでは、会葬礼状をお渡しする場合もあります。返礼品もしくは会葬礼状を手渡したら会場へ案内しましょう。
近年では、香典を辞退する遺族も増えています。その際は葬儀のお知らせをする段階で香典辞退の旨も添えられているのが通例ですし、受付に「香典は辞退申し上げます」といった張り紙をするケースもあります。とはいえ、気持ちを伝えたいという方は香典を持参する可能性があります。しかし、ご遺族が香典を辞退する以上受付では対応できません。受け取ってしまうと後になってトラブルになる可能性もあるため、厚意に対する感謝を述べた後に遺族の意向を丁寧に伝えましょう。場合によっては親族の香典だけは納受することもあるため、その際には他の参列者に配慮することが大切です。
受付におけるマナー
受付を引き受けた場合は、参列者ではなく遺族の立場になりますから、マナーをしっかりと熟知し失礼のないよう努めることが大切です。参列者と言葉を交わすことが多い受付は言葉遣いや挨拶の仕方をしっかりと押さえておかなければなりません。ここからは受付業務における注意点についてご紹介致します。
参列者が受付についたら、まず丁寧に挨拶をしましょう。「本日はお忙しい中、ご参列いただきありがとうございます」といったシンプルな一言で問題ありません。また、雨や雪などで天候が優れない日の葬儀では「お足元の悪い中、ご参列いただきありがとうございます」という言い回しでも良いでしょう。参列者が喪主の親族にあたる場合は「この度はお悔やみ申し上げます」という言葉を添えるのが通例です。
葬儀は悲しみの中で行われる儀式であり、その場に会す人たちはそのTPOを重んじるのが適切です。例えば、穏やかな落ち着いたトーンで話す・忌み言葉を使用しないといった配慮があるでしょう。それに伴い、葬儀の受付で「くれぐれもお気をつけて」や「重ね重ね御礼申し上げます」といったフレーズを使わないように意識しておくことが大切です。その他、数字の「4・9」も忌み言葉にあたるので注意する必要があります。
受付を担当する際、服装のマナーも守らなければなりません。参列者にとっても欠かせないマナーですが、受付は遺族の立場でもあるためより配慮する必要があります。参列者のマナーと変わりないので気負うことはありませんが、一般的な服装のマナーを確認しておきましょう。
基本的に、黒いスーツやワンピースを着用しましょう。参列者の場合ダーク系の色であれば問題ないとされますが、受付を努める場合は黒が無難です。靴下やストッキングも黒を選び肌の露出は抑える必要があります。また、受付は長時間立って行う必要があることも多いため靴にも注意を払いましょう。社葬の受付を努める際は従業員規定の制服でも問題ありません。ただし華美な制服ではない場合に限ります。
結婚指輪以外のアクセサリーは、原則としてマナー違反となります。ただし真珠に関しては身に着けても問題ありません。また時間の管理も必要となるため時計も着用可能ですが、派手な色やデザインを避け黒いベルトのものを選びましょう。
葬儀の受付では控えめなメイクがふさわしいでしょう。ノーメイクにする必要はありませんが派手な色合いやラメなどを使わないように心がけることが大切です。また、グロスも派手さを伴うので避けることをおすすめ致します。髪の毛は慎みを持って清楚に束ねましょう。特に、挨拶や香典を納受する作業を行う受付では長い髪が邪魔になる可能性があります。事前に葬儀用のバレッタやリボンなど、目立たない小物を準備しておくと安心です。
葬儀の受付を滞りなくスムーズに行うためにはその他の注意点も押さえておきましょう。当日になって慌てないためにも全体の流れを踏まえた上で、ポイントを事前に把握しておきましょう。
葬儀は遺族だけではなく、故人と懇意にしていた方にとって最後の別れとなる大切な儀式です。葬儀開始時間より早く会場入りする参列者も多い事も考えられます。受付は遺族側の立場に立って参列者を迎える役割でありスムーズに案内する係ですので参列者より後に会場入りすることは避ける必要があります。可能であれば葬儀開始の1時間前には会場入りして、抜かりなく準備をするように心がけましょう。また、葬儀のスケジュールや会場の配置など、わからないことがあると受付に尋ねる方が少なくありません。従って、葬儀の流れや館内図を事前に覚えておくことが重要です。特に大きな会館の場合には複数の葬儀が行われている可能性もあります。参列者が迷わないように早めに会場入りして確認しましょう。また、葬儀が始まった後も遅れて参列する方のために受付に留まる場合も考えられます。焼香のタイミングに間に合わない可能性もありますから、事前に焼香を済ませる場合もあります。ただし、先に焼香を済ませる際は遺族に了承を得た上で行いましょう。場合によっては参列者に続いて焼香をすることもあるので葬儀社のスタッフに確認することも大切です。