お墓参りは故人様やご先祖様を偲ぶための大切な行いで、お参りに加えてお墓の掃除をすることになるのが一般的です。お墓参りのマナーや墓石の手入れのマナーについては意外と知られていないかと思います。
今回の記事では、お墓参りとお手入れについて詳しくご紹介致します。
お墓参りのマナーや意味
お墓参りのマナーについてお伝えする前に、お墓参りの意味についてお伝えしていきます。お墓参りに対する価値観は個人の考え方のみならず宗教の違いによっても異なります。ここでは宗教ごとの価値観について簡潔にお伝えしていきます。
まず、仏教では「お墓参りをすることによってご先祖様や故人様を弔い、冥福を祈る場である」と考えられています。また、故人様が眠るお墓へ定期的に訪れることにより、家族の近状などを報告することもできるとされています。神道では、死を穢れとして捉えているため、お墓は「奥津城(おくつき)」と言われ霊園などに設置されているのが特徴です。神道のお墓参りでも、仏教と同様に故人様を想い供養するという意味があります。キリスト教ではご先祖様や故人様に向けてお参りを行うわけではなく、神に向けて行います。亡くなった方が生きている間にもたらしてくれた恵みや安らかに永眠できる安らぎをもたらしてくれた事を神へ感謝するという意味が込められています。
それではお墓参りのマナーについてお伝えしていきます。お墓参りのやり方については「こうでなければいけない」といった明確なルールはありません。お参りに行く先によって宗教・宗派やその家の慣習によっても違いがありますので、基本の流れや一般的な作法としてここからお伝えしていく内容を参考にしてくださいね。
仏教においては、五供(ごく)をお供えし合掌することが供養の基本とされています。五供とは「香・花・灯燭・浄水・飲食」のことを指し、この五つをお供えするのが理想ですが、ご先祖様や故人様を想う気持ちが込もっていればすべて揃っていなくても問題はありません。大切なことは形式ではなくご先祖様や故人様を想う気持ちですから、気持ちを大切にしあまり気負わずに気軽にお墓参りに出かけましょう。
以下に一般的な五供について記しますので参考にして下さい。※宗派によって多少異なります。
- 五供とは
- ・香
香とはお線香や抹香のことを指し、お線香の香りによって手を合わせる私達の心身を清めるという意味があります。また、香りが広がり行き渡ることが、全てのものに対する平等と差別のない仏様の慈悲を表しているともされています。 - ・花
花を供えることを供花といい、美しい花のように清らかに澄んだ心で仏様にお参りするという意味があります。花も香と同様に仏様の慈悲を表したものとされ、お参りをする人から見て花の正面がくるように飾ります。 - ・灯燭
灯燭(とうしょく)とは灯りや光のことを指し、仏様の場所を明るく照らす意味と仏様の慈悲の光で私たちの煩悩を消し心に安らぎを与えてくれるという意味があります。仏壇においてはロウソクの灯りがこれにあたりますが、お線香に火をつけるためだけではなく火を灯すこと自体がお供えになっているとされています。また、お墓の場合は石灯籠がその役割を果たしており、実際に火を入れることはありません。※近年では墓石が小型化してきている傾向にあるため、石灯籠が省かれている場合もあります。 - ・浄水
浄水とは清らかな水をお供えすることを指し、それによってお参りをする私達の心も洗われることを意味しています。墓石の水鉢(墓石中央のくぼみ部分)に新鮮なお水を張ります。新鮮なお水については本来は自然水とされていますが、近年では水道水をお供えするのが一般的です。 - ・飲食
飲食(おんじき)とは私たちが普段食べているものと同じものをお供えすることを指し、仏壇の場合ですと炊きたてのご飯や季節の物などを盛ったりするのがこれにあたります。私たちが食べるものと同じものをお供えすることが、仏様やご先祖様とのつながりを表すという意味があります。お墓参りの際には、故人様の好物や季節の食べ物などを選んでお供えするとよいでしょう。お参りした後は捨てずに持ち帰って頂くことで故人様やご先祖様との繋がりを表します。
墓石のお手入れとお参りの方法
お墓のお手入れでは墓石周辺の手入れをし墓石を洗います。以下に一般的な流れやコツをまとめますので参考にしてください。
- お墓のお手入れ
- お墓周辺のお手入れ…墓前で合掌してから、お墓のある区画や周辺の清掃や落ち葉集め・雑草の除去・植木の剪定・玉砂利の水洗い(汚れている場合)を行います。
- 墓石のお手入れ…墓石に水をかけながら雑巾でやスポンジに水を含ませて汚れを落とすように洗います。コケがついていれば取り除きます。この際には硬めのタワシや歯ブラシなどで擦ると墓石にキズがつき石の艶が落ちてしまいますので、柔らかい布やスポンジを使用するようにしましょう。
また、汚れがひどい場合には石材専用の洗剤で洗います。ただし塩素系や酸性系は染みや変色の原因となるので使用しないようにしましょう。 - 小物類のお手入れ…花筒や線香皿など中身を取り出してきれいなるように洗います。
ここからは一般的なお墓参りの方法をお墓参りに必要なものについても併せてお伝えします。墓地によっては必要なものを取りそろえて販売している場合もありますので手ぶらでお参りができるところも増えていますが、お参りに行く度に使うものですから一式用意しておくとよいでしょう。
- お墓参りに必要な持ち物
- 掃除に必要なもの…ぞうきん・バケツ・ゴミ袋・玉砂利洗浄用のザルなど
- お参りに必要なもの…お線香・ライター・お供え物・お花・数珠など
- 必要に応じて用意するもの…ロウソク(墓石にロウソク立てがある場合)・軍手(雑草取りをする場合)・虫除けスプレー(蚊の多い季節の場合)・手桶と柄杓(借りられる場合が一般的ですが貸し出しが無い場合)など
それではお墓参りの方法についてお伝えしていきます。
- お墓参りの方法
- 寺院墓地の場合は本堂にお参りした後にお墓へ向かいましょう。
- まずはお墓の掃除から始めます。先にお伝えしたお墓のお手入れの手順で掃除を行いましょう。
- 掃除が終わったら、手桶にきれいな水を汲み柄杓で墓石に打ち水をして清めます。
- 水を入れた花立にお花を供え、水鉢に水をいれたらお供え物を置きます。
- お線香をあげ合掌します。お線香に火を付ける際には、口で吹き消さず手で風を送るようにするか振るようにしましょう。複数人でお墓参りに訪れている場合には、お墓に眠る故人様と近しい間柄の人から順番にお参りをします。
食べ物をそのままにしておくと墓石にシミ等が出来たり、カラスが食べ散らかしたりしてしまいますもで、お参りが終わった後はお供え物は持ち帰り自宅でいただきましょう。線香についてはそのまま燃やし切り、お花はそのままにしておいて構いません。
また、霊園ごとのルールや使用規則が定められている場合はそれに従いましょう。基本的には、他のお墓やお墓参りをしにいらしている他のご家族に配慮し時と所と場合に応じた行動を守っていれば問題はありません。
お墓参りの作法は宗教宗派によって異なりますので、お線香の本数や折る折らない・立てる寝かせるなど特有のやり方があります。また神道ではお線香やお花ではなく玉串(榊)をお供えします。こういった宗教宗派の違いだけでなく、地域や家族ごとに独自のやり方のように慣習がある場合もありますので、必ずしも決まり通りの作法でなくても問題はありません。親族に普段どのようにしているのか聞いたりお墓参りに同行する家族のやり方を見てならうと良いでしょう。
宗派ごとのお線香のマナーは以下の記事内にて詳しくご紹介しておりますので併せて参考にしてください。
お墓参りや掃除が難しい場合
お墓参りや掃除が難しい場合には、お墓参りや掃除の代行を専門とした業者もあります。諸事情によってお墓参りに行けないという場合であれば、こういった代行サービスに依頼するというのもひとつの方法でしょう。お墓参りを代わって貰うというと、バチ当たりにはならないのではないかと心配になる方もいらっしゃるかと思いますが、日本では元来代参といって、本人の代わりにお参りするという風習は昔から存在していました。またお墓の清掃に関しても菩提寺がある場合には、そのお寺が代わりに行うことはよくあることなので他人に依頼するということ自体は特に問題があるわけではありません。
特に近年では地方から都市部に移り住み、以前のように家の近くにお墓がない方も多くいらっしゃるため、電話やネットで簡単に利用できるお墓参り代行サービスが人気を集めているようです。代行サービスの利用料金は各社異なりますが、15,000円~20,000円前後が相場であることが多いようです。お墓が大きかったり、追加の作業が必要になったりといった場合には追加料金がかかりますし、依頼する業者によってはお墓の場所などから追加料金がかかることもあるので、事前の確認は必須となります。代行業者の他に、お墓クリーニング専門の業者もあります。自分では落とせない汚れなどを落としたい際に活用でき、料金は一般的なサイズで概ね四万円程度と決して安くはありませんが、プロの方が手入れしてくださるので見違えるほどきれいになるようです。